中村藤吉本店は安政元年の創業以来、それぞれのお茶の「らしさ」を追い求めて参りました。煎茶は煎茶らしく、覆いをしない露地栽培の煎茶で、清々しい清涼感に溢れたものを。玉露は玉露らしく、しっかりと手間暇をかけた覆下栽培の玉露で、重厚な旨みを持つものを。
形や見た目のみにとらわれず、飲んで美味しいと思えるお茶をこれからも提供して参ります。
抹茶
抹茶とは碾茶(てんちゃ)と呼ばれるお茶、新芽の育成期間中に覆いをかぶせ、日光を遮って育てたものを茶臼で細かく挽いたお茶です。日光を遮ることで、甘味や旨味の成分が苦渋味へ変化することが抑制され、深くまろやかな甘味・旨味と、豊かで奥行きのある香りが生まれます。
また碾茶とは、抹茶の原料になるお茶で、新芽の育成期間中に覆いをかぶせ、日光を遮って育てた茶葉を蒸した後、揉まずに乾燥します。くきや葉脈を取り除き、葉肉の柔らかな部分だけを茶臼で挽くと、非常に細かい粒子状の抹茶となります。
玉露
玉露は碾茶などと同じく、新芽の育成期間中に覆いをかぶせ、日光を遮って育てたお茶です。日光を遮ることで、甘味や旨味の成分が苦渋味へ変化することが抑制され、深くまろやかな甘味・旨味と、豊かで奥行きのある香りが生まれます。品質が高い玉露は、強い甘味と旨味が醸し出す、海苔の香りに似た独特の「覆い香」があります。
かぶせ茶
かぶせ茶は煎茶と玉露のちょうど中間にあるお茶です。玉露や碾茶などと同じく、新芽の育成期間中に覆いをかぶせますが、玉露や碾茶が少なくとも20日間以上日光を遮るの対し、かぶせ茶は7~10日間程度と短くなります。玉露のようなこってりとした甘味や旨味はありませんが、煎茶よりも風味が穏やかで、苦渋味が苦手な方にもおすすめのお茶です。
煎茶
煎茶は日本茶の中で一番多く栽培され、飲まれているお茶です。茶園に覆いをせず、日光をたっぷりと浴びることで、甘味、旨味、苦味、渋味がバランス良く生成され、煎茶独特の爽やかで透明感のある風味となります。近年は苦渋味を押さえ、茶葉を濃緑色にするために適採前に数日間覆いをする煎茶が多く、荒々しさを感じるような昔ながらの煎茶は少なくなっています。当店では茶葉の見た目が悪くなりますが、できるだけ覆いをしていない煎茶を選定しています。
中村茶
中村茶は当店だけにしかないブレンド茶です。お茶の専門用語でブレンドすることを「合組-ごうぐみ-」と言いますが、中村茶は煎茶や玉露など7種類のお茶を秘伝の割合と方法で合組することで、誰でも簡単に、美味しくいれることができるお茶に仕上げています。中村茶はいろいろなお茶が混ざっていますので、冷水から高温までいれる湯温を変えることで、異なる風味を味わうことができます。それぞれのお茶の風味が混じり合うことで、単独のお茶では出せないお互いの良い部分が共存した趣のある風味が魅力です。
[煎茶]藤吉
標高が高く、寒暖差の大きい地域で育つ、煎茶藤吉(とうきち)。
秋までゆっくりと熟成させることで、今では少なくなったしっかりとした苦渋味と、高貴な香りを持つ煎茶に。男性的・野性的ともとれる全ての味や香りがはっきりとした風味は、最近の主流であるまろやかで飲みやすい煎茶に慣れていると取っつきにくさを感じるほどですが、次の一杯が欲しくなる、煎茶の魅力が溢れています。
新茶
新茶とはその年の春にとれたお茶のこと(=一番茶、宇治では5月初旬頃から)です。碾茶、玉露、かぶせ茶なども、もちろん新茶はありますが、当店では煎茶のみを「新茶」として販売しています。最大の魅力は、若々しく、みずみずしい香り。限られた時期にしかない新茶の香りは、春から初夏にかけての爽やかな季節を感じさせてくれます。若いが故に、味や香りの深みは熟成を重ねた煎茶には及びませんが、生き生きとした新緑の力強さを味わうことができます。
水出し煎茶
水出し煎茶は、水で出した時に最も美味しくなるよう「合組-ごうぐみ-」(ブレンドのこと)をした、水出し専用の煎茶です。お茶は高温で出すほど、甘味や旨味の成分と一緒に、苦渋味の成分もたくさん溶け出しますので、甘味よりも苦渋味を強く感じる原因となります。これを冷水で抽出すると、苦渋味の成分は溶け出しにくくなりますが、少し青臭み、生臭みが出ることと、味全体のバランスが悪くなるため、あまり美味しく入りません。水出し煎茶は冷水で出した時に、まったりとした旨味とコク、じわりと広がる甘味に、程よい苦渋味がバランス良くでるように独自の配合と製法で仕上げた季節限定のお茶です。
ほうじ茶
ほうじ茶とは、煎茶などの葉やくきを高温で炒ったお茶で、こうばしい香りと濃い褐色が特徴です。高温で炒ることで苦味や渋味が少なくなり、とてもさっぱりとした味となります。様々な食事や和洋菓子と相性がよく、内容を問いません。また、その優しい風味は熱くしても冷たくしても飲みやすく、のどの渇きを癒すのにもぴったりです。
ほうじ茶には、主に葉を炒った「ほうじ茶」と、くきを炒った「くきほうじ茶」があります。どちらにも異なる魅力がありますが、ほうじ茶は軽くあっさり、くきほうじ茶は甘みがあり、少しまったりとしたコクが特徴です。お好みや気分に応じてお使い分け下さい。
くき茶
くき茶は煎茶や玉露などを製造する途中、茶葉の大きさなどを選別する工程で出る茎の部分を集めたお茶です。京都では品質の高い玉露のくきを特別に「雁が音(かりがね)」と呼んでいましたが、今日では全ての茶種のくき=雁が音と呼ぶことが多くなっています。また、「白折」など地域によりいろいろな呼称が使われる場合もあります。くき茶は葉のお茶と比べ、味が淡泊であっさりとしているので、飲みやすいお茶です。また熱湯でいれても比較的苦渋味がでにくく、時間がないときにもおすすめです。
玄米茶
玄米茶は、大きくなった煎茶などに炒った玄米を混ぜたお茶です。からりと炒った玄米のこうばしい香りは、ほうじ茶などどは異なるこうばしさをお茶の風味に加えてくれます。お茶と玄米を約半分ずつブレンドしていますので、口当たりや風味がとても軽く、いつでもシーンでも気軽に飲めることも魅力の一つです。お茶漬けなどにもおすすめします。
京柳
柳の意味や内容も比較的幅広く、柳のことを番茶と呼ぶ地域もあります。当店では大きくなった煎茶や、煎茶を作る際に出る大きな形状のものを集めたお茶を指し、お茶の内容によってはほうじ茶や玄米茶の原料になることもあります。基本的には煎茶ですので風味は煎茶に似ていますが、一番の違いは茶葉の大きさと、あっさりとした風味です。玄米茶とも共通しますが、大きくなった煎茶は良い意味で甘味や旨味、苦渋味が濃すぎず、熱湯で出してもとてもさっぱりとした風味です。人によっては煎茶よりも飲みやすい、美味しいと感じる方もおり、お茶漬けなどにもぴったりです。お客様にお出しするのには向かないかもしれませんが、肩肘を張らずに楽しめるお茶です。
粉茶
粉茶は煎茶や玉露などを製造する途中に出る、細かく砕けた部分などを集めたお茶です。細かいために味の成分が出やすく、また抽出したお茶に粉そのものがたくさん含まれるので、味や色味が非常に濃くなります。そして粉茶に分類される中でも芽茶(めちゃ)、真粉(じんこ)などと呼ばれるお茶(当店では煎真粉(せんじんこ)、玉真粉(ぎょくじんこ)という名称です。)は、まだ小さな葉や芽の先の部分が団子状に丸まったものを集めたお茶です。小さな葉や芽には成分が凝縮されていますので、非常に濃厚な味わいが特徴です。
大福茶
京都ではお正月にその年の無病息災を祈願し、梅干しと昆布が入ったお茶を飲みます。
このお茶を大福茶(おおぶくちゃ、おおふくちゃ)といい、平安時代の京都で疫病が流行った際に、空也上人が疫病よけとして庶民に振る舞ったことが起源とされています。煎茶や玄米茶など、家庭やお店によって使うお茶は様々ですが、当店ではくきほうじ茶を使用しています。形式は違いますが、大福茶以外にも無病息災などを祈願するお茶にまつわる風習が、全国各地にありますのでぜひ探してみて下さい。
その他のお茶
グリーンティー、京番茶など